関の100年刃物企業として
はじめまして、エドランド工業の久保です。
当社は岐阜県関市にある、1919年創業の機械刃物製造業です。
今年で創業97年を迎えます。
創業者久保泉は鎌倉時代から続く日本刀の刀匠兼景の18代目に当たる人物で、
その縁もあり、関の刀鍛冶の始祖と言われている「元重」を崇めるために、
1915年11月13日に建碑された「元重翁之碑」事業に尽力した人物の一人でもあります。
自己紹介を兼ねて、私の初めて担当したお客様の話をさせて下さい。
ある縁から、岐阜県内にある大手の航空機関連のお客様から、刃物の注文を頂き、
1週間後に納品に伺い、その場で刃物を確認して頂いたところ、
「刀みたいな刃物ですね」「すごくキレイに光っていますね」と言われました。
当時の私は、単なる機械部品なのに刀なんて大袈裟だな、
でも、確かに刃物自体はキレイだな。と思っていました。
その当時から、3年以上が経過し、
「会社の歴史」を知り、「創業者の先祖の刀匠」を調べ
「高名な刀匠」について調べ、「社員の作り手としての誇り」を感じ、
「沢山のお客様」と出会い、「様々な刃物」を納品するうちに、
私自身、気づいた事があります。
かつて、高名な日本刀の刀匠は、
「武士にとって刀は道具でしょうが、
わたしにとりましては、わたしそのものでございます。
わたしの中にあふれている志を込めて鍛えたいと存じます。」
こんな気持ちで日本刀を作っていました。
日本刀の刀匠「兼景」から続く私たちは、
このような刀匠のモノづくりの伝統を引き継ぐことで、
誇りを持ったモノづくりをしていきたいと考えています。
私にとって、気持がこもった刃物は「輝き」を持っているのです。
刃物を作った直後は、油が付いていたり、
研磨時の黒い研磨剤が残っていて非常に汚くなっています。
布巾に洗浄液を付け、刃物で手を切らないように丁寧に拭きあげる
その瞬間に発生する「輝き」は、ただ光を反射しているのではではなく、
何百年という刀匠の時代から続く伝統があって、
誇りを持ってモノづくりを続けてきた、「輝き」なのです。
そしてただの外見だけの「輝き」だけでなく
心の中の「輝き」も取り戻せるような
そんな「輝き」を作っていけたらと思い日々を過ごしています。
現代は、武士もいないし、日本刀を使う機会もない。
ましてや、生死をさまよっているような状況でもないので、
そんな、大げさなと思われるかもしれません。
しかし、せめて刃物を使ってるその瞬間だけでも
心の中の「輝き」を復活させるような。
そんな「輝き」を感じていただけたらと思っています。
作る人の気持ち、そして使う人の気持ちが交錯し、
そしていつしか、刃物を使う瞬間だけでなく日常においても
日々の生活をしたり、仕事をしたりしている時でも
心の中に輝きが残っているような、
そんな刃物を一緒に作っていけたらと願っています。