・前文
私たちは多彩な刃物用素材と刃物があふれる国に住んでいます。
現代文化の一翼を担う「利器(生活に便利な手で使う道具)」である「刃物」は、
世界中で沢山のニーズに応じた種類が作られています。
刃物の歴史は金属技術や工業生産の発展の歴史です。
日本刀には、鉄の性質・工法上の特徴のすべてが凝集されていますが、
刃物作りこそが日本の製鉄の原点なのです。
本書では、数多くの貴重な写真・図版を用いながら、
刃物の進化の歴史をたどります。
刃物の発展の文化的背景を探るとともに、
科学的観点から刃物の製鋼素材に光をあて、
品質工学の面から見た刃物の切れ味の研究も併せて紹介します。
本書は全体を通して、著者の刃物に対する情熱、思いがあふれ、
入門書としても研究所としても楽しめます。
・目次
1.石の時代(尾上)
1-1 プロローグ
1-2 人間の生活史に関する研究の経過
1-3 残された石の文化
1-4 石の性質
1-5 石器のフルセット
2.金属利用時代の夜明け(尾上)
2-1 金属素材-銅・青銅-の登場
2-2 石器から金属器への移行と改良
2-3 刃物素材としての銅・青銅
2-4 デザインの変化
3.近世の刃物と素材(尾上)
3-1 鉄器利用の始まり
3-2 古代の鉄器
3-3 日本の刃物の特徴
3-4 外国の刃物の特徴
4.現代の刃物と素材(尾上)
4-1 技法の変化と素材の変化
4-2 刃物の強度と刃先の性能
5.包丁の切れ味の比較(矢野)
5-1 刃物塾の塾長との対話
5-2 基準刃物との比較による切れ味試験
5-3 切れ味試験の結果
6.切れ味の研究(矢野)
6-1 1970年代の切れ味の研究
6-2 切れ味試験のヒント
6-3 官能検査における切れ味試験
6-4 使用状態で変わる切れ味
6-5 各地方で作られていた包丁の実態
6-6 切れ味の研究をめぐって塾長との対話
7.切れ味の合理的な定量化(矢野)
7-1 感覚の定量化
7-2 切れ味感の定量化の方法
7-3 切れ味の変化の傾向
7-4 切れ味感はわかったようでわからない
7-5 切れ味について塾長との対話
8.よい包丁を作るための実験の方法(矢野)
8-1 よい包丁の定義
8-2 包丁の切れ味試験の実験計画
8-3 品質工学とは
8-4 包丁の製造条件の組合せ方
8-5 包丁の硬さと粗さのデータのまとめ方
8-6 刃先角のデータのまとめ方
8-7 包丁の加工についての塾長との対話
9.感覚的切れ味と機械的切れ味の定量化(矢野)
9-1 切れ味を改めて定義する
9-2 機械的切れ味の定量化
9-3 感覚的な切れ味と機械的な切れ味の比較
9-4 切れ味についてのまとめ
9-5 切れ味をまとめるにあたって、塾長との対話
10.刃物のメンテナンス
10-1 刃体の汚れ、さびなどの手入れ
10-2 刃物の研ぎ方
10-3 研ぎバリのとり方
・著者
尾上卓生
1960年より、金属熱処理に従事。
1972年 労働省鉄鋼熱処理一級技能士。
1980年 尾上高熱工業を設立、現役職工、現在に至る。
1990年より、私塾ナイフ塾開催、現在第10期続行中。
現在、尾上高熱工業社長、(財)鉄の歴史村地域振興事業団理事
岐阜県技術アドバイザーとして活躍。
<主要著書>
科学の目とナイフ,月刊誌『ナイフマガジン』(1994年より連載中)ワールドフォトプレス
刃物の知識新素材,日本工業新聞社 他多数
矢野宏
1956年 工業技術院計量研究所入所。
1991年 宮城教育大学教育学部技術科教授。
1994年 電気通信大学電気通信学部機械制御工学科教授。
現在、東京電機大学客員教授、(財)日本規格協会参与、
(株)オーケン取締役副社長、工学博士。
<主要著書>
品質評価のためのSN比,品質工学講座3(共著)日本規格協会(1988)
計測のおはなし、日本規格協会(1988)
パソコンによる生産データの効果的利用法,(共著)工業調査会(1990)
おはなし品質工学(改訂版),日本規格協会(2001)
測る-感覚を科学する,日刊工業新聞社(1991)
誤差を科学する,講談社(1994)
品質工学入門,日本規格協会(1995)
技術開発のマネジメント,(共著)日本規格協会(1996)
単位の世界を探る,講談社(1997) 他多数
Tweet
こちらの記事もどうぞ!
- 田口武一(1999)『刃物はなぜ切れるか-斜面の原理のはなし』(はなしシリーズ)技報堂出版.
- 加藤俊男(1985)『刃物のはなし』(人間の知恵19)さ・え・ら書房.
- 内田広顕(1967)『刃物の歴史』(刃物シリーズNo.7)日本刃物工具新聞社.
- 桐田一吉・内田広顕(1969)『刃物用解剖学』(刃物シリーズNo.3)日本刃物工具新聞社.
- 内田広顕(1970)『刃物に関する諸材料』(刃物シリーズNo.4)日本刃物工具新聞社.