序
刃物を作っておられる方々、あるいは熱心な研究者「なにか、刃物の測定法に関する適当な本は
ありませんか。」
私「そんな本はありません。一般的な測定法に関する本はたくさん出ていますが、刃物に関する
ものとか、現場に向くようなものはないというのが現状です。まあ、私が書きますから、待って
いて下さい。」
こんな対話が5、6年の間繰り返されてきた。その間本は一向に出来上らなかった。
今か今かと待っておられる多くの方々に、まことに申し訳なく思っている。
別になまけていたわけではない。それどころか、公私ともに多忙をきわめ、ために心身ともに
疲労困憊し、経済的にも当初の計画と大きな齟齬を来たし、今後の出版も危ぶまれるという状態に
あっても、刃物に対する執念にとりつかれて、筆を進めていたのである。
ここに書いてあるほとんどの事項が、他の測定法の本に書いてないだけに、どれほど苦労したか
解っていただけると思う。資料を集め出してから15年の才月が流れているのである。また、この中
には学者ばかりでなく、恵まれない環境にあって日夜研究しておられる在野の方々の成果も収めた
が、その労に幾分なりとも報いることが出来れば幸いである。
なお、資料の面でご援助いただいた本校教官河崎一夫、越川純男の両先生のほかに陰に陽に多大の
ご援助をいただいた全国の皆様方、理容文化社ならびに日本刃物工具新聞社に深甚の謝意を表する
次第である。
昭和43年8月
筆者 しるす
執筆者
岐阜工業高等専門学校 教官 内田広顕
執筆当時 学生(1期生) 井口義夫 井戸太加雄
高田清治 田辺幸二
本荘 昱 馬渕秀男
目次
1.緒言
2.温度の測定
2-1.炉内の温度測定
2-2.品物自体の温度測定
2-2-1.火色による測定法
2-2-2.木片による測定法
2-2-3.試験紙の発火による方法
2-2-4.水滴落下による方法
2-2-5.サーモカラーによる方法
2-2-6.示温塗布剤による方法
2-3.焼戻し色による温度の推定
3.かたさの測定
3-1.ロックウェルかたさ試験
3-2.マイクロ・ピッカースかたさ試験
3-3.かたさやすり
3-4.ショアかたさ試験
3-5.実際の測定にあたっての諸問題
3-5-1.品物の形状
3-5-2.焼入鋼の時効によるかたさの変化
3-5-3.試験機間の差
3-6.石のかたさ
4.刃先の角度の測定
4-1.実体切断法
4-2.計算法
4-3.プロトラクター
4-4.繊維触角法
4-5.触針法
4-6.光切断法
4-7.光線反射法
4-8.レプリカ法
5.刃先尖端の形状の測定
5-1.接触面積から求める方法
5-2.天秤により求める方法
5-3.切断圧から求める方法
5-4.光電管の出力電圧による方法
5-5.フイルムの感光による方法
6.切味の測定
6-1.剃刀類の切味試験
6-1-1.爪や毛髪からの判定
6-1-2.青山・石田式切味試験機
6-1-3.寺沢式切味試験機
6-1-4.本多式切味試験機
6-1-5.岩岡式切味試験機
6-1-6.北見式切味試験機
6-1-7.黒田式切味試験機
6-1-8.フラー式切味試験機
6-1-9.ウッドワード式切味試験機
6-1-10.川北式切味試験機
6-1-11.木藤式切味試験機
6-1-12.文村式切味試験機
6-1-13.高橋式切味試験機
6-1-14.ピーター式切味試験法
6-1-15.その他の切味試験機
6-2.電気剃刀の切味試験
6-2-1.越川式切味試験法
6-3.鋏の切味試験
6-3-1.布や紙切りによる判断
6-3-2.医療用鋏の切味試験
6-4.庖丁の切味試験
6-4-1.若本式切味試験機
6-5.鉋刃の切味試験
6-5-1.中村の試験法
6-6.鎌の切味試験
6-6-1.川島式切味試験機
6-7.メスの切味試験
6-7-1.北川式切味試験機
6-7-2.JIS規格による切味試験機
7.その他の測定法
7-1.平面の測定法
7-2.静摩擦係数の測定法
7-3.曲げ試験法
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