序
人類が作り出した最初の道具が刃物である。それ以来生活のあるところ、刃物があり、一日と
して欠くことのできないものなのである。それほどであるにもかかわらず、どのように発達し
てきたのか、調べようとすると、たちまち大きな壁にぶつかる。
芸術品でもある刀剣類とは違って、刃物が余りにも身近すぎたため、かえって、ぞんざいに
扱われ、現在まで残っているのが少なく、文献もほとんどないという状態で、その研究は非常に
困難である。
だからといって、いつまでもこのまま放置しておいたのではいけないと思い、全くの素人では
あるがあえて筆を執った次第である。7、8年ほど前から集めた資料をここに纏めたものが本書
であるが、その出来ばえを見るといかにも虫が喰ったように、あちらこちら隙間だらけである。
しかし、後日どなたかが、穴埋めしていただけるものと思っている。
刃物シリーズの一巻として変った味を出そうと思ったが、恐ろしいほど多忙のうちに明け暮れし、
思うにまかせなかったことは遺憾である。
この本をお読みになって、興味をおぼえ、研究に乗り出して下さる方、あるいは、すでに研究
途上にあり教えて下さる方があれば幸いである。
文献を集めるにあたって、いろいろとご協力下さった、日本刃物工具新聞社ならびに理容文化社
の方々、岐阜県金属試験場技師小坂重三氏に深甚の謝意を表したい。
昭和42年8月
筆者
目次
1.緒言
2.刃物用材料
2-1.岩石
2-2.貝類
2-3.竹
2-4.銅
2-5.鉄鋼
2-6.ステンレス鋼
3.刃物の歴史
3-1.理容・家庭用刃物
3-1-1.剃刀
3-1-2.鋏
3-1-3.庖丁
3-2.木工用刃物
3-2-1.鋸
3-2-2.のみ
3-2-3.手斧(ちょうな)
3-2-4.鑓鉋(やりがんな)
3-2-5.鉋
3-3.農業用刃物
3-3-1.石庖丁・貝庖丁
3-3-2.鎌
3-3-3.鋤(すき)・鍬(くわ)
4.刃物生産都市
4-1.シェフィールド市
4-2.ゾーリンゲン市
4-3.山形市
4-4.三条市
4-5.三島町(旧脇野町)
4-6.関市
4-7.武生(たけふ)市
4-8.堺市
4-9.三木市
4-10.小野市
4-11.土佐山田町
附録
1.外国の著名刃物会社
2.本文中に出て来た古書
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